専門医が現場から実態を語る!「ガイドラインを守った治療をした結果、悪化した…」
国や専門家が作った糖尿病の標準治療のガイドラインが「糖尿病が治らない原因」だというと、驚く人はたくさんいるでしょう。しかし、ガイドラインを守って治療したがゆえに症状が悪化したという人がいることをご存知でしょうか。
正しい知識を持つことは自分の体を守るためにはとても大切な事です。糖尿病の真実と向かい合いましょう。
糖尿病は予備軍を含めると2000万人
日本国内では、糖尿病は予備軍を含めると2000万人にものぼります。1997年では1370万人だった糖尿病は、今でも恐ろしい勢いで増え続けています。しかも、糖尿病は「一生付き合っていく病気」「治らない病気」といわれ薬をやめられることもほとんどありません。
外来診療を一人で始めた頃、医師の水野雅登さんは、糖尿病の患者さんだけがかなりのスピードで悪化していくこと実感しました。水野さんの、治療法はガイドラインの内容をきちんと守ったもので、それは「ガイドライン至上主義」といえるほどのものでした。しかし、ガイドラインに沿った治療を行ったにもかかわらず、患者さんの症状は改善することはなく、むしろ悪化していったのです。きちんとガイドラインを守った運動や食事管理を行ったにも関わらず、なぜこのようなことが起こったのでしょうか。
糖尿病患者が増え続ける原因
糖尿病人口が増加した原因は、標準治療となるガイドラインだけにはありません。標準治療となるガイドラインは、すでに糖尿病になってしまった人が利用しているものであり、その他にも原因があります。
それは、「糖質」です。
店頭だけではなく、テレビやインターネットでは美味しそうなスイーツや新作のスナック菓子が毎日のように紹介されています。もちろん、食事のメインとなるパスタやラーメン、パンなどの映像や写真も常に情報として流れています。しかもこのような糖質商品は、24時間いつでも手にすることができるため、つい口にしてしまうものです。なんとなくでも、甘いものは体に悪いと思っていた人も糖質はなぜか、ついつい食べてしまうものなのです。
人が糖質の誘惑に簡単に負けてしまうのは、糖質はとても大切な栄養素だからです。脳内では糖質を目にするだけでドーパミンが大量に分泌され「欲しい」と強く感じてしまうのです。また糖質は購入するコストは高すぎることもなく、口にすると満足感が得られるため、さらに欲しくなってしまいます。もともと依存性の高い栄養素の糖質は、企業が売り上げに繋げるにはとても良い条件が揃っているのです。
人間の糖質に対する性質を上手に利用し、企業はマーケティングのプロが策を打ち出し宣伝活動を行っています。糖質の誘惑に打ち勝つといった考えは持たず、目にしないのが根本対策です。
糖尿病の入院食にも溢れる糖質
見渡す限り糖質で溢れていても、糖尿病の標準治療では糖質は摂取するものとされています。糖質をやめるのではなく「全エネルギーのうち、6割は糖質から摂取しましょう」といっているのです。血糖値をあげるのは糖質なのに、エネルギーの半分以上を糖質にするよう指導しているのです。
糖質オフといった考えが出てきた近年でも、スイーツやジュースといった甘いものは控えめにといった程度なのです。
ところで、妊娠糖尿病をご存知でしょうか?妊娠中はインスリン抵抗性が高まるため、糖質過多な食事は血糖値が高くなりやすいとされています。そのため、今まで問題なく健康に過ごしていた人でも、妊娠してから妊娠糖尿病と診断される妊婦さんも少なくありません。
妊娠糖尿病で入院した妊婦さんには、血糖値を下げるためのインスリン注射が投与されます。しかし、驚くことにそれと同時に血糖値をあげるスイーツやお菓子などが病院では提供されています。糖質をたっぷりと含んだものを口にすれば、食事のたびに血糖値はグッと上昇します。そして、血糖値があがればインスリンを打つということが積み重なっていきます。妊娠中に大量にインスリンを打つことは流産などのリスクを高めることになります。とはいえ、入院中は食事の摂取量がチェックされているため、残さず食べるよう指導されています。
糖尿病になっても、糖質はしっかりと摂取するといった指導が行われ、その指導に従えば血糖値はあがり、薬も増えていくこととなります。
医療現場に根付く「糖質6割」
「全エネルギーのうち、6割は糖質から摂取」といったエネルギー摂取の推奨は専門家によって決定されたものです。
国が健康や医療に関しての方針を決めるときは、それぞれの専門家を集め「検討会」や「委員会」などをつくります。そして、そこで方針を作り大臣などが最終的に決定を行います。しかし、その手前には大きな影響力を持つ専門家たちがいます。例えば、「日本人の食事摂取基準」では、「日本人の食事摂取基準策定検討会」が報告書を作ります。検討会のメンバーはほとんどが大学教授や、准教授、大病院の病院長といった先生方が名を連ね、ほぼ報告書の通りに基準は決定されているのです。
この専門家たちにより、エネルギー摂取は「糖質で全体の6割を摂取」と推奨されてきました。近年になり、少しだけ糖質オフの方向にはなってきていますが、未だに4~6割です。しかも、長年にわたる「糖質6割」の考えは、深く医療現場に根づき、メディアでもそう喧伝されています。
しかし、この「糖質6割」こそが、糖尿病、肥満、メタボへの大きな影響を及ぼしてきたのです。
エネルギーはPFC量でみる
厚生労働省が公表している「日本人の食事摂取基準」では、エネルギー量は「kcal(キロカロリー)/日」が採用されています。この「カロリー理論」は時代遅れの概念です。カロリー理論は「食べ物を燃やして、水をどれだけ温めるか?」といった考えです。人の体では食べ物を摂取したときには「代謝・消化」が行われているため、これは当違いの考えといえます。しかし「日本人の食事摂取基準」は、学校給食や保健施設など、日本国内のいろいろな場所で使われています。そして、糖尿病でも標準治療で行われる食事指導として採用されています。
体内での栄養素の働きを考えると、エネルギーは「PFC量」でみるのが妥当なのではないでしょうか。PFCという言葉はピンとこない方が多いかもしれませんが、Pはたんぱく質、Fは脂質、Cは糖質を表しています。スーパーの食材や外食などでもカロリーの表示があり、カロリー値にだけ目がいってしまいますが、同じ量の食材でもそれぞれPFCバランスは大きくて違います。100kcalの肉、100kcalのバター、100kcalの米は、同じカロリーでも、食べた後の人の体での働きが全く違うのです。
したがって、食品表示は「~kcal」ではなく、「たんぱく質~、脂質~、糖質~」と表示すべきなのです。カロリーという考えでひとまとめにするのは乱暴で、大きな間違いです。カロリーが低ければ良いといった誤解を生まないためにも、PFC量での考え方をもっと広めていく必要があるのではないでしょうか。バランスのよい食事は健康な体を作るといいますが、根本の考え方に間違いがあってはいけません。自分に必要な栄養素が足りているのか、過剰に摂取しているものはないか、適量のPFC量を知っておきましょう。
自分の健康は自分で守る
前述の水野先生は、
「患者さんが糖尿病と診断された時によく受ける質問は『一生、薬を飲み続けなければいけないのですか?』です。薬をやめられないということは、糖尿病は治らないということです。」と言います。
現代において標準治療では糖尿病は治すことができません。治療により血糖値を下げることができても、血糖値が高くなりやすい体自体を改善することはできません。糖尿病は治療を続け血糖値を正常に近い範囲にコントロールしていくことが大切なのです。
糖尿病にならないためにも、自分の体は自分でしっかりと守っていく必要があります。「国の公表している基準が悪い」「ガイドラインが悪い」と何かのせいにしていても状況は変えることができません。むしろ悪化していくだけです。状況は自分で変えることができないと思い込むのはやめ、自分が変わることが重要なのです。
では、実際にどうすればよいのでしょうか?解決の方向性は至ってシンプル、他人任せをやめることです。
国の方針が変わるまで待つ必要はないのです。ガイドラインが変わるのも待つ必要はありません。決まり決まったものではなく、自分に合ったものを選択していけばよいのです。そのために、自分の体と向かいあい、しっかりと正しい知識を増やしていきましょう。
糖質オフといった言葉は、最近になり耳にするようになりました。しかし、数年前では糖質オフは「風変わりなダイエット法」とった認識でしかありませんでした。劇的な効果から、徐々にひとつの糖尿病の治療法として広がってきましたが、当初、日本学会は「認めない」という姿勢でした。近年では態度を軟化させつつあり、糖尿病学会のトップは糖質オフへと舵を切りました。何が正しいのか、何を信じるのかは自分で判断していかなければいけないのです。
もちろん、今現在、お薬を服用している人は主治医への相談は必須です。糖尿病のお薬を飲みながら自己判断で糖質を制限すると、命の関わる重篤な症状を引き起こしてしまう危険があります。糖質を制限したい場合は、しっかりと主治医と相談しましょう。
主治医は変更できます
糖尿病は長期にわたって治療が必要となります。投薬や食事療法などで血糖値をコントロールしながら、合併症のケアも行うため、長い付き合いとなります。そのため、信頼関係が重要になり、不安や疑問がある状態で治療を続けることは精神的にも負担となります。主治医と良好な関係が築けなかった場合は、主治医を変えることもマイナスではありません。日本の保険制度では、医療機関は自分で自由に選ぶことができるため、信頼のできる医師を見つけましょう。
現主治医が紹介状を書くことを嫌がる場合には、セカンドオピニオンを受けたいと伝えるとよいでしょう。紹介状の発行は法律的な義務がないため、医師が拒否することも多々あります。しかし、セカンドオピニオンという単語はポジティブなイメージがあるため、この言葉を出すだけで主治医の心理的抵抗が軽減されます。また、紹介状を依頼する時には余計なことを言わないようにしましょう。受診先が決まっていない場合も、まだ決まっていないことは正直に伝えましょう。
まとめ:自分の意識を変えていこう
現在、糖尿病の症状が進行しているのであれば、このようなアクションは早めに起こすとよいでしょう。糖尿病の標準治療のガイドラインはすぐに変わることはありません。ガイドラインの変更は10~20年といった単位の年月がかかってしまうものです。
自分の体を守るためも、今何をすればよいのかを考え、行動を起こしましょう。
【エピローグ】 もし、このようにお考えなら
今回のコラムはいかがでしたか?既にご存じの情報もあれば、「そうなんだ」「知らなかった」といった情報もあったのではないでしょうか?
「糖尿病」は、もしかしたら最も誤解されている病気のひとつかもしれません。多くの人が、「甘いモノが好きな人」「太ったオジサン」がなる病気だと思っている一方で、実は老若男女問わず可能性がある、とても身近な病気です。
こちらは、本サイトに掲載されているコラムの中からエッセンスを抽出したものですが、皆さんはどこまでご存じでしょうか?
・【基本】 そもそも、「糖尿病」ってどんな病気?
・【確率】 予備軍を含めると2000万人ってホント?“国民病”ってどういうこと?
・【兆候】 健康診断だけではわからない?“隠れ糖尿病”とは?
・【症状】 「スパイク」って何?食後に体がだるくなる原因は?
・【原因】 「血管の病気」ってどういう意味?遺伝は関係ある?
・【治療】 どんな治療方法がある?どれくらい大変?
・【予防】 糖分はすべてカラダに良くない? とにかく糖分を控えればいい?
・【関連】 「サイレントキラー」とは?他の生活習慣病と関係ある?
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