毎年発生する介護殺人はどのような状況の基で起きているのか、またその原因は何なのか?
今後確実に来る超高齢者社会、認知症患者の増加、老後2000万円問題…
現在の日本が抱える問題の中でも『親の介護』について真剣に考えていかなければいけない昨今。
親がもし要介護になった場合に備え、親と話し合いをしたくても親の方が積極的に応じない場合、あるいは怒り出してしまい話し合いすらできないという状況にある方が増えています。
しかし、介護というのは決まった時期に来るのではなく突然必要に迫られます。
そんな介護の時期を迎え『親の介護で破産する』といった現象が始まっており、もはや
「親の介護は必要になった時に考えます」
では遅い時代に突入している状態です。
今回の記事ではそんな取り返しのつかない状況を避けるため
- 将来の親の介護についてどのようなライフプランを立てるべきか
- 親の介護の為にはどのような話し合いを行っていくべきか
について真剣に考えていきます。
ライフプランを考えていく
「人生100年時代、皆様はどのように生きていきたいでしょうか?」
皆様のご両親の生き方や考え方ももちろん重要ですが、一度あなたの視点に注目して考えてみてください。
もしも「最後まで自分らしく生きたい」と考えるのであれば親の介護も含めたライフプランを考える中で『感情論』だけでは成立しないことを十分に理解しておく必要があります。
自分らしく生きるために不可欠なことがライフプランです。
ライフプランといえば直訳すると『人生設計』になりますが、この記事でいうライフプランは自分らしく生きるための理想や希望を記載するだけではなありません。
絵にかいた餅にならないように経済的な収支を浮き彫りにしたうえで、具体的な解決方法や社会保障、動産や金融資産のプランニングに落とし込んで行くことが求められています。
またライフプランは『いつまで』『何歳まで』という時間軸で考えることが非常に重要です。
では皆様はご自身の時間軸を『いつまで』に設定しますか?
仮に現役時代のライフプランであれば定年退職を目標に設定すればいいですが、それを『人生のエンディング』に置き換えた際はいかがでしょうか?
そう、それは『寿命』であり誰にもわからないのです。
ライフプランについて上記の質問をしたときに当然ながら「自分がいつ死ぬか」について明確に答えられる人はいません。
多くの方は『平均寿命』を参考に回答します。
平均寿命とは平均してあと何年生きられるかという指標であり厚生労働省から毎年発表されている数値指標です。平成27年の発表によると
- 男性の平均寿命:80.79歳
- 女性の平均寿命:87.05歳
とされており、医療の進化や住環境の進化により今後も更新していくと考えられています。
ちなみに『平成28年度版高齢社会白書』によれば今後の平均寿命は2060年には
- 男性:84.19歳
- 女性:90.93歳
になると予測されています。
本当にゴールは平均寿命?
こういったお話をすると
「なんだ、ライフプランのエンディングには平均寿命があるじゃないか。明確な指標だ!」
とプランのエンディングの答えを出す人がいますが、答えは本当にそうでしょうか。
実はここで本当に考えておかなければいけない事は『平均寿命を超えて生きた場合』の事なのです。
参考に厚生労働省の発表している100歳以上の人口のデータを見てみると、全国にに6万1568人で45年連続で増加という報告が見られます。
また国立社会保障・人口問題研究所の『日本の将来推計人口』では100歳以上の人口は
- 2037年:約37.5万人
- 2047年:約55.5万人
- 2060年:約61.8万人
に推移すると見られています。同様に日本の将来人口は2060年に8674万人になるとすると
『140人に1人』が100歳以上という時代に突入する計算になります。
ライフプランを読み間違えるな!
では仮に平均寿命をライフプランのエンディングとして考えた場合、読み間違えによってどのような弊害が起きるのか?
仮に現在の男性の平均寿命を81歳と考え設定した場合で考えてみましょう。
81歳のライフプランの方が仮に103歳まで存命だった場合、81歳で預貯金を使い切ってしまったらその先の生活はどうすれば良いのでしょうか。
真っ先に考えつくのが『生活保護』だと思います。
しかしただでさえ審査の厳しい生活保護の制度が40年後、現行より寛大、または現行と同じ形で残っているでしょうか?少子高齢化が進んでいく将来、申請の厳格化や補助金の削減などがあることは容易に予測できるでしょう。
では『子供や孫に頼る』という選択肢はどうか?
現実として80歳を超える世代の子供世代は50代から60代でいわばリタイアを控えた世代、自分たちの将来もあるため親の介護など面倒を見る余裕がない場合が多いのが現実です。
ならば孫に…
確かにそのような形はありえないことではありませんが、皆様の周りを見渡した時孫が自分の祖父母の面倒を見ているという世帯がどれだけあるでしょうか。
この選択肢もやはり現実的とは言えないでしょう。
『それならば介護施設に入居すればいい!』という案もあるでしょう。
しかしこれに関しては40年後の話でなく現在でも預貯金が底をついたことにより入居費用の支払いが滞り、施設を出ていかなければいけないという現象が起き始めているというのが現実です。
『人生100年時代』でライフプランを立てる
預貯金が底をつき、施設を出ないといけない状況になったときどのような現象が起きるのか。
高額な費用の未納分は施設の経営に大きな影響をもたらすため、施設側は未納分の料金の返済を求めるというのが自然な流れになります。
その請求先は対象者の『親族』となります。
※ここからは未納分の返済のイメージを紹介しますが、実際の未納分の返済は償却期間などで一人一人違うためイメージがしやすいよう、概算での説明となります。
老人ホームの入居費用はいわば住宅購入と似ており
- 入所費:頭金
- 月々の部屋代:毎月の住宅ローン代
と考えていただけるとわかりやすいかと思います。
入所費に関しては施設により様々で入所費0円の施設があれば、1000万円以上する施設もありますが、当然入所費0の施設の方が月々の支払い額は高額になります。(このあたりの仕組みが住宅ローンと似ている部分になります。)
支払いのシミュレーション
ここに2人の入居者がいます。
【条件】
- AさんとBさんが同時に入所して5年間、滞ることなく、支払いを続けた
- 6年目からAさんが滞納をしたとする
Aさんは入所費ゼロで月々の使用料30万円、Bさんは入所費1000万円で月々の支払いが20万円とした場合の差額を計算すると
2人の支払い済差額は400万円となります。
施設側としてもこの差額は公平感からしても見過ごすわけにはいきません。
未納分については施設側からAさんに請求されることになります。
施設側の対応
一般的に施設では2か月以上の滞納があると、支払いについての話し合いが行われその後も支払いが滞ると退所勧告を出すケースが多いです。
ケースによってはその際に数百万円の請求をされることも珍しくありません。
しかし現実的にすでに支払いを滞らせている本人がこの金額を支払うことは不可能で施設は未納分を入居時に立てた保証人に請求することになります。
では今回のケースのAさんが皆様の親ならどうでしょうか。
こんな大金を請求されてすぐに支払えるという方は少ないのではないでしょうか?
読み間違えの結末は…
さてこのような状態になったらどうすればいいのか…
現実として『親の介護施設費用が払えない』ことを理由として破産申告を行う方が増えてしまっています。
このような負の連鎖はさらに保証人の子供の進路や生き方に影響を及ぼしかねません。
極端なケースと思われるかもしれませんが実際にこのようなケースが増えていることも事実です。
だからこそライフプランを立てる時は『人生100年』を想定し今から備えを行っていく必要があるのです!
親に介護が必要な状況は明日来るかもしれません。このような状態を避けるためにもご自身のライフプランをしっかりと立てること、そしてご自身の親と向き合い老後のことを考えた話し合いを今のうちから進めておくことを強くおすすめします。
【エピローグ】 もし、このようにお考えなら
超高齢化社会を迎え65歳以上の人口が約4人に一人となった現在の日本では、社会問題と化した「介護」がもはや避けては通れないリスクとなりました。その課題の中心にあるのが「担い手問題」「費用負担問題」の二重苦であり、いずれも現役世代の皆さんに降りかかってくる問題です。
今や7割を占める夫婦共働き世帯においてどちらかが担い手になれば、それは同時に収入ダウンを意味することになります。また、費用は親の年金で何とかなると考えている方が多く、直面して初めて頭を抱える方が少なくありません。
《参考》
・介護費用(月平均)8.3万円/生命保険文化センター「令和3年度生命保険に関する全国実態調査」
・厚生年金(月平均)14.6万円、国民年金(月平均)5.6万円/厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和2年度)」
他方、本来なら頼りにしたい社会保障も財政難に直面しており、国民の負担は増加傾向にあります。
《参考》
・利用者の自己負担割合:創設時( H12年度)1割から、現役並みの所得がある場合は3割へ(H30年8 月制度改定)
・40~64歳の月平均介護保険料:H12年度 2,075円から、令和2年度 5,669円に増加/厚生労働省「介護保険制度をめぐる最近の動向について」
かかる状況下、生活苦に伴うストレス等を原因に殺人まで惹起する深刻な問題である一方で、現役世代の大半は目の前の生活に追われ何ら対策を講じていないことも多く、実際に介護が発生してから後悔する方が後を絶ちません。
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