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血縁者に、「ピロリ菌」 の保菌者はいませんか?

 

我が国日本におけるガンとの戦いの歴史は、まさに胃ガンとの戦いと言っても過言ではありません。

 

高齢化の影響を除いた胃ガンの罹患率は年々減少傾向にありますが、それでも1980年代から現代に至るまで男性では最も多いガンであり、いまだに年間12万人以上が罹患し、4万人以上が死亡しています。

 

特に日本人は欧米諸国と比較すると約5倍も胃ガンに罹患しやすく、その原因はピロリ菌にあると言われています。

日本や韓国は歴史的に見ても発ガン性の高いピロリ菌を保有している民族であり、世界的に見て胃ガン発症率が高い地域なのです。

 

それでも隣国の韓国では胃ガンに対する効果的な政策を実施し予防医療の普及に務め、胃ガンの死亡者数を減らすことに成功している現状に対して、日本ではまだまだ死亡者数が高いままです。

 

ここまで胃ガンに対する知見や理解も深まってきたにも関わらず、なぜこのような現状が続いているのでしょうか?

 

そこで本書では、我が国における胃ガンの現状に触れ、韓国との違いや今後取るべき対応について解説していきます。

<日本における胃ガンの現状>

 

 

2018年度の国立がん研究センターの報告によれば、胃ガンの年間罹患者数は男性で86,905例、女性で39,103例、死亡者数は男性で27,771例、女性で14,548例でした。

 

高齢化の影響を除いた胃ガンの罹患率は年々減少傾向にありますが、罹患者数そのものは年々増加傾向にあります。

また胃ガンは塩分による胃粘膜の損傷も一因と言われており、漬物文化の浸透していた以前の日本では非常に罹患率の高いガンでした。

特に、食料保存のために漬物摂取量の多かった東北地方で発症率が高いという興味深いデータも報告されています。

 

部位別に見ても、男性では前立腺ガン同様最も罹患しやすいガンの1つであり、女性でも乳ガン、大腸ガンに次いで3番目に多いガンです。

ここまで医療が発達した現代の日本において、なぜ胃ガンの脅威は衰えないのでしょうか?

 

<胃ガンの原因、ピロリ菌とは?>

 

 

日本において胃ガンが未だに多くの人を苦しめているには理由があります。

それは、日本人の胃内に存在するピロリ菌のせいです。

 

胃ガンの原因の約99%は、胃内に潜むヘリコバクター・ピロリ、いわゆるピロリ菌の感染に伴うものと言われています。

胃ガンの原因として塩分摂取なども指摘されてきましたが医学的根拠はなく、考えられる要因のうち唯一ピロリ菌感染のみが科学的に胃ガンとの関係を結論付けられています。

 

ピロリ菌感染に伴い胃内には慢性的な炎症が引き起こり、胃粘膜が萎縮してしまい萎縮性胃炎となり、胃の粘膜細胞は持続的なダメージの蓄積で発ガンしやすくなるのです。

 

ピロリ菌は全世界の約50%が保菌者であると言われていて、親から子への垂直感染を認めることも報告されています。

さらに、ピロリ菌の遺伝子は非常に変異スピードが早く、様々な地域で独自の発達を遂げているため、地域によってピロリ菌の病原性は異なります。

これまでの多くのデータや研究により、ピロリ菌の感染率とは関係なく、ピロリ菌そのものの特性によって胃ガン発症率に差が出ることが分かってきました。

 

例えば、アフリカ諸国ではピロリ菌の感染率が高いにもかかわらず、胃ガン発症率は東アジア諸国よりかなり低いというデータが出ています。

また同じ東アジア諸国の中でも南方に行くほど胃ガン発症率は下がる傾向にあります。

欧米のピロリ菌は、胃よりも十二指腸に潰瘍を作りやすいという特徴があり、胃ガン発症率はアジアと比較して低い傾向にあります。

 

では我が国日本におけるピロリ菌の特性はいかがでしょうか?

結論から言えば、世界的に見ても日本と韓国に存在するピロリ菌は残念ながら胃ガン発症率が非常に高いという特徴があります。

さらに興味深いことに、日本で圧倒的に胃ガン発症率が低い沖縄県では、今まで「塩分摂取量が少ない」「ストレスが少ない」などの非科学的な根拠を並べられていましたが、調査の結果、沖縄県民の保有するピロリ菌は欧米型が多いということが分かったのです。

 

元をたどれば、朝鮮半島を渡って日本に住み着いた人たちの胃の中にいるピロリ菌が最も発ガン率が高く、実際に東シベリアや朝鮮半島、中国の東側、そして日本では胃ガン発症率が非常に高いのです。

 

しかし、現代では多くの人種が飛行機で世界中に分布しているため、以前と比べてピロリ菌の分布と胃ガン発症率はどんどん混ざり合ってきているのです。

つまり、欧米からすれば「アジア人よ、毒性の強いピロリ菌をばら撒くな!」と考えるのも仕方ありません。

 

では、そういった現状に対し日本や韓国ではどのような対策が取られているのでしょうか?

 

<日韓における胃ガン対策の違い>

 

 

日本、韓国ともに発ガン率の高いピロリ菌を保有しており、世界的に見ても胃ガンによる死亡率トップを走る2国ですが、日本に比べて韓国における死亡率低下は目覚ましいものがあります。

 

これは、日韓における胃ガンの検診受診率の差が大きく関与していると思われます。

韓国の胃ガンの検診受診率は、10年以上前は日本と同程度でしたが、最近では50%と非常に高くなっています。

それに対し日本の胃ガンの検診受診率は未だに10%程度であり、この差が死亡率の改善に差を生んでしまっているのです。

 

なぜここまで検診受診率に差が出てしまっているのでしょうか?

これは国の政策による違いが非常に大きいと言えます。

 

韓国では、バリウム検査もしくは内視鏡検査のどちらかを少なくとも2年に1度は受診するように指示しており、仮に受診しなかった者が胃ガンに罹患した場合医療費が高くなるような政策を行っています。

この政策によって、韓国における胃ガンの検診受診者数は一気に増加しました。

 

その反面、日本ではどうでしょうか?

日本では、胃ガン検診においてバリウム検査と内視鏡検査のどちらが有用なのかの議論をするだけで、ガン検診受診率を引き上げるための議論は全くといって言いほど為されていないのが現状です。

 

胃ガン患者を減らすための適切な国策を行わずに検診受診率や検診の質は低いまま、胃ガンによる死亡率を下げられずただ傍観している。

今我々はそう言った苦境に立たされているのです。

まとめ

我々に必要なのはゴッドハンドと言われるような天才外科医ではなく、多くの人が早期に胃ガンを発見できるよう検診の受診を普及させることです。

これは胃ガンに限った話ではなく、乳ガンや大腸ガンなど多くのガンで検診受診率や検診の質は、その他の先進国に比べて劣っています。

 

こういった事実を多くの人が知り、国策ではなく自分の意思で検診を受診し胃ガンに対策をしようと考えることが、今我々に取れる唯一の対抗策だと思います。

 

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