その喉の渇きは、尿で糖分を排出せざるを得ない“緊急事態”によって引き起きているのかもしれません…
糖尿病の症状の一つである「口喝」。これは、とてものどが渇いて異常なほどに水分をとってしまう状態です。人が生きる上で水分は大事ですが、何事にも「ほどほど」はあります。たかが水分と考えるのではなく、その理由をきちんと知ることも必要なのです。
適度な水分摂取は必須ですが、過度に水分を欲しがるようになっていたら、異変が起きているかもしれません。もしかすると、その喉の渇きは尿で糖分を排出せざるを得ない“緊急事態”によって引き起きているのかもしれません。そこで、体内の糖と水分の関係について、「大場内科クリニック」の大場先生を取材しました。
糖は十分にあるのに、身体が糖を利用できない状態
糖尿病になると喉が渇くのは、本当なのでしょうか?
はい。糖尿病とは、血液中の糖が増え、それを体内でコントロールできなくなる病気です。水分は糖と結びつきやすいため、過剰な糖が尿の中に排出される際、一緒に水分も体外へ出ていきます。すると、頻回な排尿によって脱水となり、喉が渇きます。それは糖尿病の代表的な自覚症状と言えるでしょう。
正常時なら、血糖はどのようにコントロールされているのですか?
「インスリン」というホルモンの働きにより、筋肉などの細胞は血糖をエネルギー源として取り込むことができます。エネルギーとして消費されずに余った糖は、脂肪などの形で体内に蓄えられます。ところが、高血糖の状態が続くとインスリンの分泌が減り、働きが弱くなってしまうのです。血糖の高い状態が続くと、尿中にも糖があふれて出てきてしまうというわけです。
結果として糖を排出できていれば、インスリンが少なくても大丈夫なのでは?
血糖値が高くなるような生活習慣を続けている限り、糖を排出し続けても状態は改善しないどころか、インスリンの分泌はさらに減り、働きも弱まっていきます。そして、インスリンの働きが弱まることで、筋肉がエネルギー源として血糖を十分に使えなくなり、代わりに脂肪や蛋白質が消費されはじめます。その結果として、体重が減っていきます。ただし、「ダイエットに効果的」とは絶対に考えないでください。糖尿病による弊害の方が、肥満のそれをはるかに上回ります。
運動不足によって、体内の糖が過剰になることは?
筋肉量の減少とともに基礎代謝が少なくなってくると、血糖値は上がりやすくなります。ですから、“太っていないのに糖尿病”という人はいらっしゃいますね。ですが、典型的なのは、糖分の取りすぎで糖尿病になるパターンでしょう。
喉の渇きを覚えたら、体重の変化に注意
喉の渇きは糖尿病以外でも起こりますよね? それが糖尿病のサインかどうかを知りたいです。
スポーツをした後や、飲酒によっておしっこがたくさん出た後などにも、喉は乾きます。ただし、頻尿があって、それを追いかけるように水分を取っているとしたら、糖尿病かもしれません。また、体重の顕著な増減に着目してみましょう。余った糖が脂肪へ変わると太りますし、糖が使えなくて脂肪を燃やしはじめると痩せます。
ほか、糖尿病ならではの自覚ってありますか?
「甘い物が欲しくなる」習性ですね。糖分の過剰摂取を続けると、次第により多くの糖分が欲しくなってしまう一種の中毒症状を引き起こすことがわかっています。また、体内で糖が余っているにもかかわらず、体がそれをうまく利用できていないためでしょうか。糖尿病が進行している際にみられる症状で、悪循環を起こしています。
もし上記に該当していたら、確信がなくても受診すべきでしょうか?
ぜひ、そうしていただきたいですね。糖尿病の早期発見はもちろんですが、「糖尿病ではなかった」という“除外診断”をつけることも大切です。受診と治療は別物と捉え、「自分の体になにかが起きているのか、起きていないのか」を確認しておきましょう。治療の必要性を考えるのは、その後の話です。
過ぎたるは、及ばざるがごとし
ちなみに、高血糖が続くとどうなるのでしょうか?
全身の血管の壁が傷付きます。あくまでイメージですが、「研磨剤の入った洗剤で、ガラスのコップをこすっている状態」に近いですね。血管の老化は誰にでも起こり得ることですが、「より加速させている」のが糖尿病の実態です。
具体的な影響は?
真っ先に影響が出るのは全身の細い血管で、次々と“詰まり”が起きていきます。細い血管が多い目の網膜や腎臓、神経で症状がみられはじめます。具体的には、視力の低下や尿蛋白、局所的なしびれや痛みなどです。
すぐに命が脅かされることはなさそうですが?
そんなことはありません。次の段階として、心臓や脳の血管に障害が起きてくると、心筋梗塞や脳卒中を起こしかねないからです。むしろ、糖尿病の治療で大切なのは、患者さんが心筋梗塞や脳卒中にならないことです。
健康診断で血糖の異常値が出たら、どれくらい深刻に受け止めるべきでしょうか?
糖尿病の進行は例えるとすれば、坂道の転がり方に似ています。初期の緩やかな下りほど元に戻りやすいです。ある程度下ってしまってから治そうとすると、時間がかかりますし、その間の合併症リスクも高まり続けます。来院される人で多いのは、異常値が出ているのに“様子見を数年間も続けてしまった”患者さんです。糖尿病は一生にわたって自己注射や薬の服用を続けることになる可能性もあり得ますから、早めに対処しましょう。
最後に、読者へのメッセージがあれば。
糖尿病予防でまず求められるのは、食生活や運動を含めた生活習慣の改善です。その人の健康意識を変える必要もあります。ぜひ、糖尿病が軽度なうちから、改善に取り組んでください。また、「良かれと思って間違えていた」パターンもよく見受けられますので、信頼して相談できる医師の指導の下、健康づくりに励みましょう。
編集部まとめ
糖尿病で喉の渇きが起きるのは、血糖値が高い状態が続いて尿中に糖があふれ、尿の回数が増えて脱水状態となるからです。また、血糖値が高い状態が続くとインスリンの分泌が減り、働きも弱まってしまい、体重が減ってしまいます。ぜひ、医師からの正しいアドバイスの下、生活習慣の改善に取り組んでみてください。
まとめ:喉の渇きだけではなく、体重の変化も気を付けよう
糖尿病の症状には、口喝(喉の渇き)や頻尿(おしっこの回数が増える)がありますし、体重の変化も気を付けたいところです。なぜ血糖値が高くなると喉が渇くのか、そのメカニズムが分かったらそのほかの症状にも注意してみましょう。気になったら、まずは医師に相談してみましょう。
【エピローグ】 もし、このようにお考えなら
今回の動画はいかがでしたか?既にご存じの情報もあれば、「そうなんだ」「知らなかった」といった情報もあったのではないでしょうか?
「糖尿病」は、もしかしたら最も誤解されている病気のひとつかもしれません。多くの人が、「甘いモノが好きな人」「太ったオジサン」がなる病気だと思っている一方で、実は老若男女問わず可能性がある、とても身近な病気です。
こちらは、本サイトに掲載されているコラムの中からエッセンスを抽出したものですが、皆さんはどこまでご存じでしょうか?
・【基本】 そもそも、「糖尿病」ってどんな病気?
・【確率】 予備軍を含めると2000万人ってホント?“国民病”ってどういうこと?
・【兆候】 健康診断だけではわからない?“隠れ糖尿病”とは?
・【症状】 「スパイク」って何?食後に体がだるくなる原因は?
・【原因】 「血管の病気」ってどういう意味?遺伝は関係ある?
・【治療】 どんな治療方法がある?どれくらい大変?
・【予防】 糖分はすべてカラダに良くない? とにかく糖分を控えればいい?
・【関連】 「サイレントキラー」とは?他の生活習慣病と関係ある?
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