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【年110万円まで】生命保険を使った生前贈与の方法と注意点とは

相続税対策の1つの手段として、生前贈与を利用するケースは多くあります。中でも注目されているのが、生命保険を使った生前贈与。

 

生前贈与で生命保険を使う方法は、相続税対策に有効です。ただし、仕組みや注意点を知らずに行うと、期待どおりの節税効果を得られない可能性もあるので気を付けましょう。

 

この記事では、生命保険を使って生前贈与する方法と、実際に行うときの注意点を解説します。

相続税対策が注目されている理由は「相続税の基礎控除額引き下げ」

相続税対策として生前贈与に注目が集まっている理由は、2013年の税制改正です。

 

この税制改正により、2015年1月1日以降に発生した相続では、相続税の課税基準となる「遺産に係る基礎控除額」が大幅に引き下げられることになりました。基礎控除額の引き下げとは、相続税が非課税になる範囲が縮小されること。つまり、以前より少ない財産でも相続税が課税されるようになったのです。

 

実際、2015年以降は相続税の課税対象が大幅に増えています。税制改正前、相続税の対象者は全体の4%程度でしたが、税制改正以降は8%程度※。以前よりも多くの家庭で相続税が身近なものになっているということです。

 

※出典:国税庁ウェブサイト「令和2年分 相続時の申告実績の概要」より「1 被相続人数の推移」「2 課税割合の推移」 

 

こうした背景により注目されている相続税対策の1つが、生前贈与です。

 

生前贈与とは、被相続人(財産を遺し亡くなる人のこと)が亡くなる前に財産を贈与すること。ただ、「個人から別の個人への贈与」には贈与税という税金が発生するため、方法をよく考えなければ相続税より多額の税金を払う可能性もあります。

 

いかにして有効な形で生前贈与を行っていくのか。その1つが、生命保険を使った生前贈与です。

 

 

 

生命保険を使った生前贈与

被相続人が亡くなる前に、財産を贈与する方法を生前贈与と言います。

 

被相続人が亡くなってからの財産には相続税がかかりますが、生前贈与で贈与される財産には贈与税がかかります。そのため、相続税という税金を抑えるために生前贈与を行うのであれば、贈与税という税金を抑えなければ意味がありません。ここでは、生命保険を使った生前贈与の方法について解説していきます。

 

生命保険を活用する生前贈与の方法1:暦年課税

暦年課税とは、年間110万円までの贈与であれば贈与税がかからない制度です。この制度を使い、生命保険で生前贈与する際の一例を解説しましょう。

 

<生命保険を使って「暦年課税」で生前贈与する方法>

  • 親(贈与者。相続発生後は被相続人になる)が契約者・受取人を子ども(受贈者。相続発生後は相続人になる)にし、毎年の保険料が110万円以内になる生命保険を契約する
  • 毎年の保険料(110万円以内)を親が子どもに現金で支払う

 

上記の場合、親が保険料を負担するために贈与と判断されますが、保険そのものは契約者である子どもの資産となります。このように暦年課税を利用して親から子どもに保険料を贈与し、年間110万円の保険料支払いを10年続ければ、合計1,100万円相当を生前贈与できるのです。

 

この方法のメリットは、保険という形にすることで子どもが受け取った財産を無駄遣いする可能性を防げることにあります。また、受け取った現金で子どもが保険料を支払えば、子ども自身が「保険料控除」という所得控除を受けることも可能です。

 

なお、上記のケースで子どもが保険金を受け取る際には、保険金は「一時所得」として所得税の申告が必要です。

 

ただし、生命保険の受け取りで一時所得になる場合、支払った保険料は必要経費として、さらに特別控除額として50万円を課税所得から差し引けます。実際に課税が発生するケースは少ないでしょう。

 

したがって、1,100万円を現金で一括で贈与・相続するよりは、税額の負担を抑えやすくなります。

 

生命保険を活用する生前贈与の方法2:生前贈与機能付き生命保険

先ほどは、一般の生命保険を活用して現金を保険料という形で生前贈与する方法をご案内しました。

 

ここでは、元々生前贈与を目的とした保険商品、「生前贈与機能付き生命保険(生存給付金付終身保険)」を活用する方法をご案内します。

 

生前贈与機能付き生命保険は「生存給付金付終身保険」とも呼ばれていて、終身保険に生存給付金の機能が付いた保険商品です。一生涯の死亡保障をベースに、保険の対象となる人(被保険者)が生存している場合はあらかじめ指定した人に毎年一定の生存給付金が支払われる仕組みになっています。

 

この保険を使い、生前贈与する際の一例を解説しましょう。

 

<生前贈与機能付き生命保険を使って生前贈与する方法>

  • 親(贈与者)が契約者・被保険者となり、生存給付金の受取人を子ども(受贈者)として、毎年の生存給付金が110万円以内になる生命保険を契約する
  • 契約期間中に契約者である親が亡くなった場合、残りの保険金は死亡保険金として子ども(親の死後は相続人)に支払われ、死亡保険金は相続税の課税対象となる
  • 死亡保険金は相続税の対象であるため、相続税の非課税枠(500万円×法定相続人の数)内であれば相続税はかからない

 

生前贈与機能付き生命保険の多くは、保険料を契約時に一括払いします。ただ、子どもが受け取るのは毎年110万円以内の生存給付金なので、贈与税がかからない範囲で生前贈与が可能です。

 

暦年課税の仕組みを利用して毎年子どもに一定の現金を贈与する場合、毎年110万円以下であっても「当初から確定していた計画的な贈与」とみなされ、課税される恐れがあります。

 

しかし、生前贈与機能付き生命保険を使った贈与は税務上、計画的な贈与とは見なされないと国税庁が認めています※。安心して生前贈与できる方法と言えるでしょう。

 

参考:国税庁ウェブサイト「保険料負担者(保険契約者)以外の者が受け取る生存給付金の課税上の取扱いについて」

 

 

 

生命保険を使った生前贈与の注意点

ここでは、生命保険を使った生前贈与を行う際の注意点を解説していきます。

生命保険で生前贈与を考えている人は、必ず確認しておいてください。

 

暦年課税を使うときの注意点

先述した、「毎年110万円以下の暦年課税を使い、被相続人が相続人の生命保険の保険料を払う(贈与する)方法」の注意点です。

 

ここでもっとも大切なのは「年間110万円の基礎控除内で毎年贈与が行われていた」と税務署に認めてもらうことです。そのためには、ただ毎年110万円以内の資金の動きがあったという事実だけでは足りません。暦年課税での贈与を税務署に認めてもらうために必要なことは、以下のとおりです。

 

  • 毎年、贈与のたびに贈与契約書を作成する
  • 振込など証拠の残る形で、贈与契約書どおりの贈与を行う
  • 該当する預金の通帳や印鑑はすべて子ども(受贈者)が管理する

 

これらをしっかりと行っておかないと、1年単位の贈与ではなく「当初から確定していた計画的な贈与」と判断され、全額に対して贈与税が課される可能性が生じます。贈与税は相続税よりも負担が大きいため、かえって負担が増す結果になりかねません。

 

また、「相続時精算課税制度」を利用していると、暦年課税の基礎控除(年間110万円以内)を利用できない点にも注意が必要です。

 

 

生前贈与機能付き生命保険を使うときの注意点

生前贈与機能付き生命保険の場合、「当初から確定していた計画的な贈与」と見なされることがありません。そのため、贈与契約書の作成といった煩わしい手続きも不要です。

給付金の支払通知書を保管しておけば贈与の証明にもなるため、贈与税に関して気遣う場面が少なくすむのは大きなメリットと言えるでしょう。

 

しかし、生前贈与機能付き生命保険にも贈与時の注意点があります。それは課税の注意点ではなく、保険というリスク商品を活用することで起こるデメリットです。

 

生前贈与機能付き生命保険に限らず、多くの保険では契約して早期に中途解約すると元本割れしてしまう可能性があります。契約途中で「やっぱり他の方法で生前贈与しよう」と思っても、解約返戻金はそれまで支払った保険料相当額以下になることが多いです。

 

また、生前贈与機能付き生命保険の中には「外貨建て保険」や「変額保険」と呼ばれる商品もあります。これらの商品は資産運用に特化しているため、生存給付金の金額が変動する可能性があります。

 

贈与税対策としてはメリットのある商品ですが、保険商品として見たときにはリスクがあるため、検討する際はファイナンシャル・プランナーなどの専門家に相談するようにしてください。

 

 

 

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