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障害年金を受け取る場合、労災年金が減額になるってどういうこと?

障害厚生年金も受け取っている場合、労災年金側で金額を調整し「障害補償年金」が減額されます。

 

筆者は地方中核病院に勤務する医師です。

仕事や通勤など業務に関連することで病気やケガになってしまったときの保障として、障害年金と労災年金があります。この2つの制度には、実は併給調整があることを知っていますか? 両方を受け取るときは総支給額は同じですが、労災年金からの支給額が減額されます。少しややこしいですね。

この記事では障害年金と労災年金の仕組みと、上手に活用するためのポイントを紹介します。

 

 

障害年金の等級と労災の等級は異なる

 

まず、前提として障害年金と労災年金は全く異なる制度です。各人が支払っている保険料の保険制度が異なります。労災年金は労災補償のうち、年金形式で支給される給付のことです。

 

 

 

障害年金は日本年金機構によって審査、給付が行われます。また、労災補償は厚生労働省労働局が管轄し、審査・給付を行います。

審査項目も障害年金と労災年金とでは異なっています。障害年金は1〜3級、労災補償は1〜14級まであり、それぞれの級数で対応しているものはありません。

労災で等級に認定されたから、障害年金を必ず受給できるという訳ではありません。障害年金は労災年金とは別に申請をする必要があります。

 

障害年金と労災年金をどちらも受けられることになった場合、どちらからも全額給付を受けられる訳ではありません。

 

ここからは障害年金と労災年金の併給調整についてご説明します。

 

 

障害年金と労災年金の併給調整

 

先に結論からいうと、両方の給付を受ける場合は労災年金から受給する予定分の金額のみを受け取る場合と同じになるように調整されます。

障害年金を受け取った分は労災年金から減額されます。そのため、障害年金も労災年金も受け取っている状態ですが、結果としては多くの場合で労災年金から受給する予定分の金額を結果として受け取ることになります。

 

 

障害年金と労災年金を受給するときは労災年金の給付が減額される

 

受給する障害年金の種類によって、労災年金の減額割合が決まっています。

労災年金の減額率は下記の表の通りです。

 

 

労災補償では業務や通勤中のできごとが原因で後遺障害が残った場合に、その障害の程度によって1〜14級までの等級があります。等級に応じて給付内容が決まっています。

 

 

このうち、障害年金との調整の対象になるのは「年金形式の障害補償給付」のみです。この記事ではこのことを労災年金としています。

つまり、労災の障害等級が1〜7級の方が対象になる可能性があります。

 

労災年金の調整率は0.73 (減額率 27%)で小さいものではありませんが、減額されたとしてもこの減額分は障害年金の受給で補填される部分になるので、調整前の労災年金の額よりも少なくなることはありません。

つまり、労災年金が減額されたからといって損にはなりません。

労災から補償されるか、日本年金機構から社会保障を受けるかの違いだけです。

労災年金を受け取る額は減っていますが、どこから支払われるかが異なるだけです。

 

労災年金と障害年金

 

 

労災年金を受給する場合、20歳前障害による障害基礎年金は支給停止

 

例外的に障害基礎年金が支給停止になる場合があります。それが、20歳前障害による障害基礎年金と労災の年金形式の障害補償給付の両方を受給できる場合です。

年金保険の加入は20歳から義務付けられています。そのため、年金保険に加入していない20歳前の障害による障害基礎年金は特例として支給されています。特例での支給であるため、労災年金と同時に受給することができる条件の場合は労災年金が優先して支払われることになっています。その場合、障害基礎年金は全額支給停止になります。

 

 

労災の一時金を受け取ると障害手当金はもらえない

 

労災の一時金は、労災等級の8〜14級に該当したときに受け取ることができます。これは一時金のため、障害年金との調整で減額の対象にはなりません。

障害厚生年金には障害3級に満たない障害を負った人に対して障害手当金という一時金があります。この障害手当金は、労災の一時金を受け取る場合は支給されません。

一時金同士で併給調整される、という認識でよいでしょう。ここでも損はしません。

受給事由が別傷病の場合は併給調整されない

障害年金と労災年金の併給調整は、原因が同じ傷病の場合に行われます。

別傷病で労災年金と障害年金のそれぞれが支給される場合は調整されません。

 

具体的な例は以下のとおりです。

通勤中の交通事故が原因の身体障害で、障害年金を受給している人が、事故とは関係のない心臓の疾患で障害年金を受給する場合

この場合は、通勤中の事故が原因とする労災年金を全額受け取ることができ、心臓の疾患で障害を負っているため障害年金を全額受け取ることができます。

 

 

まとめ

 

障害年金と労災年金の併給調整や例外について解説しました。

同一傷病で障害年金と労災年金の両方から給付を受けられる条件の場合、総支給は同じですが、労災からの給付が一定の割合で減額され障害年金で補填されます。

調整の対象となるのは労災等級 1〜7級の労災年金 (障害補償年金) だけです。

労災の等級が 8〜14級で、一時金の給付を受ける場合は障害厚生年金の障害手当金が受給できません。

一般的には労災給付の方が障害年金による給付よりも多いです。そのため、労災年金が減額されるというよりは、減った部分が障害年金側から支給されます。調整後の支給額は結果として変わらないように考慮されています。そのため、損はしません。

 

障害年金も労災年金も病気やケガの際に、私たちの生活の支えになる頼もしい制度です。しっかり学んで、上手に活用しましょう。自身が障害年金をどの程度もらえるのかも、把握しておきたいですね。

 

 

 

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