“介護破産”にならないために、まだ始まっていない「今」何をしておくべきかを解説します。
いずれは担うことになる親の介護、その費用はどれくらいかかるのかご存知でしょうか。施設に入所する、在宅で介護するなどケースはさまざまですが、高額な費用に頭を悩ませている世帯は少なくないのが現実です。
例えば施設に入所する場合、「住む」だけではなく、食事や日常の消耗品、介護費用なども含めての金額になりますから、自分の子どもが独り暮らしをするのとは訳が違います。
「在宅ならそれほどかからないんじゃない?」というのも夢物語です。ちょっとした蓄えくらいではとても賄えないのが現実です。
では一体どれくらいの費用を準備しておかなければならないのか。その内情を見ていきましょう。
もはや他人事ではない、介護破産とは
まずは、施設に入所する場合を考えてみましょう。
例えば、介護付き有料老人ホームの場合、入所一時金が1000万円以上で、月額利用料は地方であれば月額15万円、都内であれば25~30万円が相場とされています。23区内であれば、さらに費用は跳ね上がります。入所施設の中でも利用料が比較的安い特別養護老人ホームであっても、月額およそ15万円程度が相場となっています。
両親とも入所する場合は当然その倍額、介護には相当のお金がかかることが想像できるでしょう。この安い特別養護老人ホームでさえも介護が必要な方すべてが入所できるわけではありません。介護保険制度の改定後、入所条件は要介護3以上となり入所が難しくなったこと、また自己負担の増額による家計ひっ迫などが、介護問題を大きくしている要因となっています。
施設の利用料を支払うために預金を食いつぶしているケースや、施設に入所できず行く当てを失った世帯では、子どもが仕事を退職し在宅介護に専念する、いわゆる「介護離職」を余儀なくされるケースも少なくありません。
このように介護問題が原因となり、親だけでなく子の世帯までが貧困状態に陥るケースが増加しているのです。そして、貧困化にあえぐ介護生活の末に待ち受けているのが「介護破産」です。超高齢化社会を進むわが国にとって、この介護破産は社会問題の一つとなっています。「貧困から介護破産へ」という最悪のシナリオは、いずれ介護を担う人にとって、もはや他人事ではない問題なのです。
介護によって中流家庭が陥る悲劇
介護によって中流家庭が陥る悲劇
介護によって貧困にあえぐ世帯の事例を見てみましょう。
東京都内在住の男性会社員Aさん(48)には、要介護5の母親がいます。費用が手ごろな特別養護老人ホーム(特養)に入所するために2010年から待機し、4年後の2014年にようやく入所に至りました。しかし翌年2015年4月の介護保険制度の改正を機に、特養からの請求額と介護保険の自己負担分も含めて、月額8万円から約17万円に跳ね上がったというのです。両親の年金収入があるとはいえ、実家の借地料や、そこで暮らす父親の生活費や医療費の支払いがあり、到底賄うことができません。
Aさんは月10万円の負担を余儀なくされ、家計状況は厳しいものとなってしまいました。10万円/月×12×10年=1,200万円……想像するだけでもゾッとする金額です。子育てと違い終わりがないのが介護、と言われるように、Aさんの負担は10年どころか、この先20年続くかもしれません。そして、その先に待っているのは……?
介護保険制度が整い、社会保険が手厚いと言われる日本で、なぜこのようなことが起きているのでしょうか。それは少子高齢化に伴って、増大した社会保障費が国の財政を圧迫しているのが一番の理由です。国は、介護保険報酬を抑えるために、高額な費用がかかる施設介護から在宅介護を目指す方針へと切り替えたのです。
その結果、2015年の介護保険制度の改正によって、多大な影響を受けるようになったのはAさんのような多くの中流家庭です。低所得層への救済策が投じられる一方で、その財源は支払い能力のある世帯に頼るばかり、中流家庭の負担だけが重くなる一方というのが現状なのです。
「親の年金もあるし、自分たちにもある程度の蓄えがあるから大丈夫」と思っていても、必要とするときに介護を受けられない、介護費用が底をつく、など厳しい介護問題を抱えてしまうケースが急増しているのです。
介護破産を免れるために、やっておきたいこと
現在、日本では介護保険制度が整いさまざまな介護サービスが年々充実しています。しかし、どうすれば公的支援を受けることができるのか、どの施設やサービスが最適なのかなど、介護の基本的な情報が広く知られていないのが現状です。そのため、在宅介護に踏み切り早々と離職を決断してしまうケースや、高額なサービスを選び経済的に困窮状態に陥ってしまうケースが後を絶ちません。
しかし逆に言うと、このような介護破産は、親の介護が始まる前に積極的に介護に関する情報収集しておくことで、防ぐことができるものなのです。介護はいきなり始まることも多いですが、
- 「ちょっとした蓄え」ではなく、大きな蓄えを持っておくこと
- 兄弟姉妹がいるなら「誰が何を担うのか」を予め決めておくこと
- 必要に応じて行政の援けを借りられるように情報収集しておくこと
- 親の望む介護を明らかにしておくこと
いつ介護が始まっても揺るぐことが無いよう、予め準備しておくことが必要です。
親の介護のためだけではありません。いずれやってくる自分たちの老後のためにも、なるべく働き続けて収入を絶やさないことが大切です。特に都会では、晩産化によって老後資金の貯め時のタイミングを失う家族が増えているのも事実です。確かに都会は便利ですが、すべての物価が高いことを念頭に置き、「使う」と「貯める」のバランスが大事なのです。
情報収集だけでなく、老後の年金や資金に関する不安や悩みがある時は、ファイナンシャルプランナーに相談することもお勧めします。自分たちの老後にはどのくらいの費用を蓄えておけば安心できるのか、早めにシュミレーションしておくことが介護破産の予防策となるでしょう。
【エピローグ】 もし、このようにお考えなら
超高齢化社会を迎え65歳以上の人口が約4人に一人となった現在の日本では、社会問題と化した「介護」がもはや避けては通れないリスクとなりました。その課題の中心にあるのが「担い手問題」「費用負担問題」の二重苦であり、いずれも現役世代の皆さんに降りかかってくる問題です。
今や7割を占める夫婦共働き世帯においてどちらかが担い手になれば、それは同時に収入ダウンを意味することになります。また、費用は親の年金で何とかなると考えている方が多く、直面して初めて頭を抱える方が少なくありません。
《参考》
・介護費用(月平均)8.3万円/生命保険文化センター「令和3年度生命保険に関する全国実態調査」
・厚生年金(月平均)14.6万円、国民年金(月平均)5.6万円/厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業の概況(令和2年度)」
他方、本来なら頼りにしたい社会保障も財政難に直面しており、国民の負担は増加傾向にあります。
《参考》
・利用者の自己負担割合:創設時( H12年度)1割から、現役並みの所得がある場合は3割へ(H30年8 月制度改定)
・40~64歳の月平均介護保険料:H12年度 2,075円から、令和2年度 5,669円に増加/厚生労働省「介護保険制度をめぐる最近の動向について」
かかる状況下、生活苦に伴うストレス等を原因に殺人まで惹起する深刻な問題である一方で、現役世代の大半は目の前の生活に追われ何ら対策を講じていないことも多く、実際に介護が発生してから後悔する方が後を絶ちません。
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