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闘病体験記「スポーツクラブに勤務し健康にも人一倍気を遣っていた私がまさか…」

 発熱や結膜炎のほか、運動をする前から心拍数が上昇することも… 思えば、あれが合併症の始まりだった…

 

「健康に気を遣う」と聞くと、何を想像しますか?食事に気を遣う、運動習慣を身に着けるなど、さまざまな「気の遣い方」があります。

中でもスポーツジムで仕事をしているような人ならば、毎日何かしらの運動をしていそうですし、体形にも気を遣いますから食事だって健康的だろうと思いますよね。

 

しかし、それでも糖尿病になってしまうことはあるのです。

 

 

糖尿病の家族歴があり、運動や食事内容などに人一倍留意していたというよっしーさん(仮称)。「糖尿病は必ずしもルーズな生活に起因しない」ことを周知すべく、今回の企画へ賛同していただきました。糖尿病にかかるとどんな生活が待っているのか、なにを糖尿病の“兆し”としてチェックすべきなのか。医師などの専門家とは一線を画す「リアルな視点」から、自らの闘病歴について語っていただきました。

 

 

入院時の血糖値は正常値の5倍にも

 

編集部

漫画を拝見しましたが、体調不良で緊急入院されたそうですね?

 

Aさん

はい。2015年の年始に高熱や吐き気などがひどくなり、最寄りの医療機関へ車で送ってもらいました。「なんだか体調がおかしいな」と感じたのは、その1年前くらいでしょうか。当時、スポーツクラブに勤めていたのですが、発熱や結膜炎のほか、運動をする前から心拍数が上昇することもありました。今思えば、糖尿病の合併症が出はじめていたのでしょう。

 

よっしーさんの漫画はこちら

 

編集部

診察の結果、「糖尿病」と判明したのですよね。

 

Aさん

病院へ運び込まれたときの血糖値は「475mg/dl(※)」で、「糖尿病性ケトアシドーシス」と診断されました。自然に体内でつくられるインスリンがほとんど効いていなかったそうです。入院の2カ月くらい前から甘いものが欲しくなり、たまに手を伸ばしていたものの、普段は果物などヘルシーな間食にして、糖分を控えていたつもりです。
(※)正常とされる空腹時血糖値の上限目安は100 mg/dl

 

編集部

糖尿病の心当たりは、とくになかったのですか?

 

Aさん

父と弟は2型糖尿病の発症歴をもち、私自身も妊娠糖尿病を煩っていたことがあります。2006年の次男の出産時には、新生児呼吸窮迫症候群(しんせいじこきゅうきゅうはくしょうこうぐん)を発症し、集中治療室に送られたほどです。しかし、その後の特別な注意や通院の指示などは受けていません。血糖値が落ち着いたので、「食事のカロリーに気をつけてね」程度のアドバイスでした。

 

編集部

糖尿病について、どの程度の知識をおもちだったのですか?

 

Aさん

家族歴があったので、入院以前から調べるなどはしていました。スポーツクラブに勤めたのも運動のためですし、自分専用の炊飯器で玄米を食べるなど、自己流の努力は続けていたつもりです。1日1万歩を目安にしたウォーキングや筋トレにも励んでいました。

 

編集部

糖尿病は1型と2型に分かれますが、どちらだったのでしょう?

 

Aさん

1型か2型かの明確な診断は受けていません。1型糖尿病の判定に用いられる検査が陰性だったので、「生活習慣が問われる2型だろうね」とのことでしたが、運動や食事制限は積極的にしていたのです。ですから、納得できないところがありました。個人的な感想ですが、「2型の原因は不摂生に限らず、いろいろなタイプがある」という印象です。

 

 

医療に任せきらず、自分で治すという発想

 

 

 

編集部

その後、入院生活が続いたのですよね?

 

Aさん

はい。血糖値の自己測定やインスリンの自己注射ほか、院内での運動を自主的におこなっていました。驚いたのは、白米を含んだ“普通の食事”が出されていたことです。そこで、血糖値がなかなか下がらなかったこともあり、食事の糖質制限を自分から申し出ました。「自分の体のことなんだから、自分でベストな選択をしなくちゃ」という思いが強かったですね。

 

編集部

糖質制限の話題が、医療従事者側から出なかったのですか?

 

Aさん

おそらく、糖質制限という概念自体が、まだ糖尿病治療の標準的な手法として整っていなかったのかなと考えています。私自身は、家族のこともあったので、調べて知っていました。一部の医療機関では注目されていたからです。

 

編集部

治療中、なにを心の支えにしていましたか?

 

Aさん

支えとは少し違いますが、合併症の怖さですね。とくに目と腎臓は守りたいと感じました。目は生活に大きく関係しますし、透析を受け続けるのも大変です。そのリスクに比べたら、「主食を抜くくらい、どうってことはない」と考えられるようになりました。ただし、患者さんによっては、合併症の説明を受けたことで落ち込む方がいらっしゃるそうです。

 

編集部

ご家族のメンタルフォローなどはありましたか?

 

Aさん

病気のことについては、あまり深く話し合っていませんでした。家族からしたら、メンタルが大きく関わる病気ですし、どう対処していいかわからなかったのでしょう。一方の私自身は、もう“崖っぷち”なので、開き直れていました。同時に、これ以上、家族に迷惑をかけたくないという気持ちも強かったですね。「自分でなんとかしなきゃ」と思っていました。

 

編集部

現在は、回復して落ち着いているのですよね?

 

Aさん

のみ薬による治療は続けているものの、普段の生活に戻れています。インスリン注射については「一生続く」と宣告されていましたが、退院後約半年で必要としなくなりました。もちろん、結果としてたまたまであって、意図して注射を克服したわけではありません。

 

 

実体験があるからこそ言える、糖尿病激減に向けた秘策

 

 

 

編集部

入院中、心に大きく残ったことはありますか?

 

Aさん

同室の患者さんから「お菓子や不摂生の説教」を聞かされたことでしょうか。ご本人の反省があるのか、むしろ同病患者には厳しいのです。私は不摂生をしていなかったのに、そういう目で見られてしまうんですよね。糖尿病にかかると、「自己管理の甘い人」とみなされる傾向があるようです。

 

編集部

病気にかかる前の自分へ、なにか伝えるとしたら?

 

Aさん

いろいろと調べて工夫していたつもりだったのですが、「正しいかどうかを確認してから実践しなさい」と伝えたいですね。とくに、「糖尿病には運動がイイ」という説を盲信していたようなところがあります。テレビやインターネットなどで得られる情報は、「たまたま、その人にとって向いていた」というだけ。そのまま自分に当てはまるとは限りません。

 

編集部

糖尿病を意識していない人に一言お願いします。

 

Aさん

「家族歴などがあったら、自覚のないうちから、血糖値を自分で計測し続けてほしい」ということでしょうか。糖尿病には「不摂生」というイメージがあるものの、それだけとは限りません。市販の簡易キットなどがありますので、ぜひ、活用してください。医師から「糖尿病です」と告げられる前に、早く発見できます。

 

編集部

医療や保険政策へ携わっている人に向けて言いたいことは?

 

Aさん

今でも使っている血糖値の計測機器は、一定条件を満たさないと、保険適用されません。月にして約1万5000円を全額負担しないといけないのです。これがきついですね。必要なことなのに、費用負担が重くて「使えない」と言う人もいます。もし、自覚の乏しい人でも安く使えるようになったら、「糖尿病は激減する」はずです。医療従事者側が「食事に気をつけましょう」と注意するまでもなく、勝手に自己管理を始めると思います。

 

編集部

最後に読者へのメッセージがあれば。

 

Aさん

企業健診や40歳以上の特定健診を受けられない方って、早期発見の網から漏れていますよね。私自身がそうでした。そこに“歯がゆさ”のようなものを感じます。合併症が起きてしまうと、なかなか元には戻りません。診断がついて「これから治療を始めましょう」と言われるまで、待っていてはだめです。自分の健康は自分で守る意識をもっていただきたいです。

 

監修医師からのコメント

金子 和馬先生(医師、医学博士)

 

谷脇さん

よっしーさん、お元気になられてよかったです。
重度のケトアシドーシスがあって入院されたとのことですが、一般的にケトアシドーシスは、1型、あるいは重症の2型糖尿病の際に生じます。
よっしーさんがおっしゃるように、2型の中に色んなタイプがありますが、1回の検査で「1型糖尿病ではない」と判定されたからといって、すぐに2型と決めつけず、もう少し精査したほうがいいかと思います。

 

 

編集部まとめ

 

国内の追跡調査によると、糖尿病患者全体の家族歴陽性率は42%とのこと。このような遺伝要因に加え、好ましくない生活習慣が引き金となっておこる「2型糖尿病」。しかし、その実態は、もう少し複雑なようです。それに、あらゆる要因をひとくくりに「生活習慣」とパッケージ化しているだけで、必ずしも運動不足や暴飲暴食とは限りません。結局のところ、自分のどのような行動が血糖値を上げ下げしているのかは、自己計測してみないと確かめられないのでしょう。よっしーさんの告白により、糖尿病の正確な理解が進みました。

 

 

 

 

まとめ:「自分は大丈夫」という気持ちはむしろ危険かも?

 

よっしーさんのように、人一倍気を遣っていても糖尿病を発症する人は少なからずいます。生活習慣、食事の内容、運動習慣だけではなく、遺伝という要素も糖尿病発症には含まれます。糖尿病には大きく2種類ありますが、「2型糖尿病」のメカニズムは、現在分かっているものよりもう少し複雑なのかとも考えられるようになりました。

「これだけやっているから自分は大丈夫」という気持ちは捨てることも、糖尿病発症予防には必要なのかもしれません。

 

 

 

エピローグ もし、このようにお考えなら

今回のコラムはいかがでしたか?既にご存じの情報もあれば、「そうなんだ」「知らなかった」といった情報もあったのではないでしょうか?

 

「糖尿病」は、もしかしたら最も誤解されている病気のひとつかもしれません。多くの人が、「甘いモノが好きな人」「太ったオジサン」がなる病気だと思っている一方で、実は老若男女問わず可能性がある、とても身近な病気です。

こちらは、本サイトに掲載されているコラムの中からエッセンスを抽出したものですが、皆さんはどこまでご存じでしょうか?

 

・【基本】 そもそも、「糖尿病」ってどんな病気?

・【確率】 予備軍を含めると2000万人ってホント?“国民病”ってどういうこと?

・【兆候】 健康診断だけではわからない?“隠れ糖尿病”とは?

・【症状】 「スパイク」って何?食後に体がだるくなる原因は?

・【原因】 「血管の病気」ってどういう意味?遺伝は関係ある?

・【治療】 どんな治療方法がある?どれくらい大変?

・【予防】 糖分はすべてカラダに良くない? とにかく糖分を控えればいい?

・【関連】 「サイレントキラー」とは?他の生活習慣病と関係ある?

 

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