本当に2,000万円不足するのか!?ひとつ言えることは「平均」だけではわからないということです。
多くのメディアで騒がれた、2019年の“老後資金2,000万円問題”。
「老後までに2,000万円も必要なのか」と思った人は多いのではないでしょうか。
一方、2,000万円問題の計算根拠となる家計調査では、高齢者の貯蓄平均額が2,384万円※であることはあまり知られていません。老後の必要額とされる2,000万円は、平均的な高齢世帯であればすでに準備済みだという実態があったのです。
※出典:「家計調査報告 2017年」(総務省 家計調査 2017年)貯蓄・負債編P28
老後資金2,000万円は、本当に足りない2,000万円なのでしょうか。すべての世帯が用意すべき金額なのでしょうか。実際のところは誰にもわかりません。ただ一つ調査の結果から言えることは、平均像を見るだけでは個人の必要額はわからないということです。
大切なのは、ご自身と家族にとって必要な老後資金を考えることです。そこで今回は老後資金2,000万円問題の根拠を解説しながら、各家庭に適した老後資金の考え方を解説します。「本当に2,000万円必要なの?」と思っている人は、参考にしてみてください。
老後資金2,000万円問題の陰で、高齢者の貯蓄平均は2,000万円超
ここでは、改めて「老後資金2,000万円問題」の根拠を見てみましょう。
元々この2,000万円という数値は、金融庁がまとめた報告書の一文からきています。
▼発端の報告書▼
金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書 「高齢社会における資産形成・管理」
▼報告書 P21から引用▼
“夫 65 歳以上、妻 60 歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ 20~30 年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で 1,300 万円~2,000 万円になる。”
上記の「毎月の不足額の平均5万円」は、総務省の2017年度家計調査の数値です。この年の家計調査では、夫65歳以上・妻60歳以上の高齢無職世帯の家計は毎月約5万円でした。そこから毎月の5万円×30年=2,000万円という金額が導き出されたのです。
ところが、先述したように同年の家計調査では、高齢世帯(世帯主が60歳以上で2人以上の世帯)の貯蓄額平均は2,384万円となっています。金融庁の報告書にも、高齢世帯の平均貯蓄額は2,000万円を超えていることは書かれていました。しかし、2019年当時は「老後に2,000万円必要」という部分だけが一人歩きしていたのです。
このことから推察できるのは、高齢世帯で発生している毎月5万円の赤字は、貯蓄があるから取り崩して使っている5万円かもしれないということです。「本当に足りない5万円」なのか「貯蓄があるから取り崩している5万円」なのか。調査結果だけではわかりません。
結局、老後資金として本当に2,000万円必要になるのかは、人によって違うとしか言えないのです。金融庁も、レポートの中で老後資金の不足額は各々の収入や支出、ライフスタイルなどで大きく異なると述べています。2,000万円という数値に踊らされるのではなく、各家庭で本当に必要な金額を考えることが大切なのです。
本当に必要な老後資金の考え方
先述したように、老後資金の必要額はひとりひとり違います。
では、自分や家族にとっての必要額はどうやって計算すればいいのでしょうか。
老後資金を計算するためのポイントは、以下の二つを整理することです。
- 老後の収入
- 老後の生活費
詳しく見ていきましょう。
老後の収入
まずは老後の各収入がいくらぐらい期待できるのか確認し、見込み収入を計算してみてください。
・労働収入:老後に働いて得る収入。継続雇用制度の条件などを確認しよう
・公的年金:公的年金制度の老齢給付金の金額。ねんきん定期便で確認しよう
・私的年金:確定給付年金(DB)や確定拠出年金(DC)、国民年金基金や個人年金保険といった、公的年金に上乗せ給付を目的した各種制度、年金商品。自身の加入している制度や商品の見込額を確認しよう
・退職金:企業が独自に積み立てる退職金。確定給付年金や確定拠出年金制度を退職金として利用している企業もある。職場で見込額を確認しよう。
老後の生活費
次は生活費です。
以下を参考に、老後はいくらぐらいで生活するのか目安をつけておきましょう。
・平均的な目安は現在の生活費の70%程度
・ただし、人によって生活費の必要額は変わる。お金のかかる趣味がある人は要注意
・持ち家の有無や住宅ローンの完済時期によっても変わってくるので考慮して計算する
収入も生活費も、あくまで目安でかまいません。ざっくりと整理した「見込み老後収入」から「見込み生活費」を差し引いて、だいたいの不足額がわかればOKです。
何十年後の未来を完璧に予測することはできません。まずはだいたいの不足額を把握し、今から老後資金を準備するために動き出すことが大切です。
老後資金の不足額を用意する方法
先述の老後資金の計算で不足額が生じたときの対処法は、大きく分けて以下の2つです。
1.老後の収入の柱として労働収入を確保する
2.リスク資産を取り入れて私的年金を増やす
それぞれ、詳しく見ていきましょう。
1.老後の収入の柱として労働収入を確保する
老後の収入には公的年金や退職金などがありますが、年金や退職金のコントロールは容易ではありませんよね。
では、現役のうちにどうやって老後収入を増やせばいいのでしょうか。もっとも現実的な方法は、老後の労働収入の確保です。2022年現在、政府は高齢期就労の環境整備を進めているため、老後も働きやすい環境ができてきています。たとえば会社員の場合は、高年齢者雇用安定法によって「65歳までの雇用確保」が企業に義務づけられています※。これによって定年が60歳から65歳に延長されたり、定年後も65歳までは継続雇用制度で働けたりといった環境が整うようになりました。
日本全体の長寿化にあわせて、今後はどんどん高齢期就労が活発になるはずです。そのため現役のうちから高齢期も働ける基礎体力を付けると共に、老後も長く働ける環境を少しずつ作っておくといいでしょう。
たとえば、今から副業を始めてスキルと人脈を作っておけば、老後にフリーランスとして独立する方法もあります。フリーランスには定年年齢がないため、うまくいけば高齢期も長期の安定収入を確保できます。
公的年金や退職金を大幅に増やすのは難しいことですが、今から老後に向けて体力とキャリアを作っておけば、一定の労働収入は見込めるはずです。労働収入があれば、老後の生活費不足も補填しやすくなるでしょう。
2.リスク資産を取り入れて私的年金を増やす
老後収入の確保とあわせて、リスク資産を取り入れて私的年金を増やすことも考えましょう。
リスク資産とは、株や投資信託といった値動きのある資産です。リスク資産への投資は大きな収益を期待できる反面、損失を被る可能性もあり、「怖い」という印象があるかもしれません。しかし老後資金は、実際に使うまでの準備期間が長い資金です。長期でコツコツ積み立てることでリスクを抑える効果が期待できるため、今から少額で始めれば、リスクを抑えつつある程度資産を増やせるのではないでしょうか。
老後資金にリスク資産を取り入れるときにおすすめの方法は、iDeCoかつみたてNISAで投資信託を積み立てる方法です。どちらも「投資で得た収益にかかる約20%の税金を非課税にできる」制度で、投資対象に投資信託が用意されています。投資初心者でも比較的手軽に投資信託を活用した節税投資ができるため、リスク資産を取り入れたい人におすすめです。
ただし、老後資金をリスク資産だけで用意することはおすすめしません。リスク資産は、株式市場の影響などさまざまな外的要因で資産価値が変動します。コツコツ時間をかけて積み立てることである程度リスクを抑えられるものの、100%の元本保証はありません。
したがって老後資金には貯蓄や保険といった元本保全性の高い資産も組み合わせ、バランス良く資産を準備することが大切です。
iDeCoやつみたてNISAの利用方法や、リスク資産と貯蓄・保険商品との保有バランスなど、わからない点は専門家に相談してみてください。大切な資産を準備するときだからこそ、専門家の知見をうまく活用しましょう。
まとめ
老後資金2,000万円問題によって「老後は2,000万円が必要」という印象を持っていた人もいるでしょう。しかし実際の高齢者の平均貯蓄額は2,000万円を超えていて、本当に2,000万円必要なのかどうかは誰にもわかりません。
結局は、ご自身と家族にとって最適な老後資金を考え、少しでも早く準備を始めるしかないのです。まずは今回ご紹介した方法で老後資金の必要額をざっくりと計算し、不足額があれば少しでも早く準備を始めてみてください。
とはいえ、一人で老後資金を計算して準備を始めることには不安もあると思います。悩んだときは、ライフプランにあわせた資産運用提案のプロであるFPに相談するといいでしょう。FPなら、あなたの家庭にあわせた老後資金の準備方法を提案してくれるはずです。
大切な資産を準備するときこそ、専門家の客観的な視点を活用してみてください。
【エピローグ】 もし、このようにお考えなら
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