効果から不足・摂りすぎにより起こる症状まで、健康維持に欠かせない成分を知って健やかな人生を!
「たんぱく質」という言葉はよく聞くし、「体に良い」ということは分かるけど、それ以外の詳しいことは知らないという方も多いのではないでしょうか。たんぱく質とは?という基本の情報から、1日に必要なたんぱく質量、摂取の注意点などをご紹介します。
体には欠かせないたんぱく質
人の体は主に、水分、たんぱく質、脂質、ミネラルの4つの成分で構成されています。また「たんぱく質」は、炭水化物、脂質とともに、エネルギー産生栄養素と呼ばれています。
たんぱく質は20種類のアミノ酸がペプチド結合して構成された化合物です。たんぱく質の種類は多く、その構造や性状、働きはそれぞれ異なります。
たんぱく質は筋肉や臓器、皮膚、毛髪などの材料としてだけでなく、ホルモンや酵素など体の機能の調節も行っており、人間の体には欠かせないものとなっています。
たんぱく質を構成する「アミノ酸」とは
アミノ酸はたんぱく質を構成する大切な成分です。20種類のアミノ酸は、体内では作ることができないアミノ酸(必須アミノ酸)と、体内で糖質や脂質から作り出すことができるアミノ酸(非必須アミノ酸)に分けることができます。
必須アミノ酸(9種類)
- イソロイシン
- ロイシン
- リジン
- メチオニン
- フェニルアラニン
- トレオニン(スレオニン)
- トリプトファン
- バリン
- ヒスチジン
非必須アミノ酸(11種類)
- チロシン
- システイン
- アスパラギン酸
- アスパラギン
- セリン
- グルタミン酸
- グルタミン
- プロリン
- グリシン
- アラニン
- アルギニン
必須アミノ酸は体内で作ることができないため、食事から摂取する必要があります。食品から摂取するたんぱく質は、アミノ酸の構成により体内での利用率が異なります。
必須アミノ酸をバランスよく含んでいるものが、「良質なたんぱく質」と呼ばれます。
食品中のたんぱく質を必須アミノ酸の組成から評価する方法に「アミノ酸スコア」があります。アミノ酸スコアの数値が100に近いほど理想的な食品で「良質なたんぱく質」といえます。全9種類の必須アミノ酸の含有量が一定基準を満たしていれば、アミノ酸スコアは100となりますが、そのうち1種類でも基準に達しない必須アミノ酸がある場合は、アミノ酸スコアは低くなります。
たんぱく質の種類
食品から摂取するたんぱく質は、大きく「動物性たんぱく質」と「植物性たんぱく質」に分けられます。
- 動物性たんぱく質:魚、肉、卵、乳製品など
動物性たんぱく質は9種類の必須アミノ酸を多く含んでいるため、体内へのタンパク質吸収率が非常に高いです。ただし、植物性たんぱく質よりカロリーが高いので摂り過ぎには注意が必要です。
- 植物性たんぱく質:大豆、大豆製品、小麦、米など
植物性たんぱく質は9種類の必須アミノ酸のうち不足しているアミノ酸もあるため、動物性たんぱく質より吸収率が低くなります。しかし、動物性たんぱく質より脂質量が少ないため、太りにくいです。
食材によって含まれる必須アミノ酸が異なるため、動物性たんぱく質と植物性たんぱく質をバランスよく摂ることが大切です。
たんぱく質の働き
たんぱく質の働きを知ると、さらに食事に対する意識が変わるかもしれません。確認しておきましょう。
人間の体には約3~10万種類ものたんぱく質があり、それぞれ働き方は異なります。
- 体を動かすエネルギー源
- 栄養や酸素を運ぶ
- 免疫機能維持し体を守る
- 体の機能を調節するホルモンや酵素をつくる
- 内臓、筋肉、血液、毛髪など体の構造を維持する など
このように、たんぱく質には様々な役目があることがわかります。
たんぱく質不足になるとどうなる?
食生活の偏りはたんぱく質不足を引き起こしやすく注意が必要です。たんぱく質不足は体だけでなく、心にもダメージを与える可能性があります。
たんぱく質不足になる原因
たんぱく質が不足する原因は、食事量の低下にあります。
- 過激なダイエットをした場合
- 加齢に伴い自然と活動量が減り食事量も減ってしまった場合
忙しさのあまり食事を抜いたり、簡単に済ませている場合も注意しましょう。
たんぱく質不足により起こる症状
たんぱく質不足が続くと、心身に影響が出てきます。
筋力の低下
体内のエネルギー源が減少したんぱく質が不足すると、その不足分を補うために筋肉に蓄えられているたんぱく質を分解してしまいます。そのため次第に筋肉が減少していきます。
基礎代謝の低下
筋肉量が減ると基礎代謝が低下し、太りやすくなります。
肌や髪などにダメージが起こりやすい
肌も髪もタンパク質から作られています。肌のハリやツヤがなくなり、しわ、たるみの原因にもなります。枝毛や切れ毛、抜け毛などのトラブルが生じやすくなります。
免疫力低下
たんぱく質は免疫細胞の材料となります。不足により免疫力が低下し、体調を崩しやすくなります。
疲れやすい、集中力の低下
たんぱく質が不足すると、ドーパミンやセロトニンなどの神経伝達物質が生成できなくなり、脳の働きが悪くなります。その結果、疲れやすい、やる気がでない、集中できないなどの症状が現れます。最近ボーとしていることが多いなと感じたら、たんぱく質不足が原因かもしれません。
健康維持のためにはたんぱく質は不可欠です。特に高齢者の方は筋力低下により、転倒のリスクが高くなります。積極的にたんぱく質を摂取するようにしましょう。
たんぱく質の摂り過ぎも危険?
現時点では、厚生労働省はたんぱく質の耐容上限量を設定し得る明確な根拠となる報告は十分ではないとし、上限を設けてはいません。
しかし、摂取したたんぱく質がすべて体内で吸収されるわけではないため、たんぱく質の摂り過ぎにより体に負担がかかっていることは否定できません。
内臓に負担がかかる
食事で摂取したタンパク質のうち余ったものは分解されて窒素になり、アンモニアに変化します。アンモニアは有害な物質であるため体の外に排出しなければなりません。アンモニアは肝臓で無害な尿素に変換されたあと、腎臓で尿として排出される仕組みとなっています。過剰なたんぱく質の摂取は肝臓や腎臓に負担をかけてしまうので注意が必要です。
カロリーがオーバーし、肥満になりやすい
特に動物性たんぱく質を多く含む食品は脂質量も多く、カロリーが高いものが多いです。摂り過ぎると太りやすくなります。
1日に必要なたんぱく質の摂取量(推奨量)
厚生労働省による日本人の事摂取基準(2020年版)では、1日に必要なたんぱく質量を以下のように示しています。
1日のたんぱく質摂取目標量(%)
- 18~49歳・・・摂取エネルギー量の13~20%
- 50~64歳・・・摂取エネルギー量の14~20%
- 65歳以上・・・摂取エネルギー量の15~20%
1日のたんぱく質摂取推奨量(g)
- 18~64歳の男性は65g
- 65歳以上の男性は60g
- 18歳以上の女性は50g
これらの数値はあくまで推奨量であり、個人の状態によって変わります。年齢や性別、体重、運動の有無、運動内容によっても変わってきます。
例えば、普段よく口にする食品の100gあたりに含まれるたんぱく質の量をみてみましょう。以下の数値は文部科学省の「食品成分データベース」 で検索したものとなります。
食品100gに含まれるたんぱく質量
- 豚ロース肉(脂身付き)・・・19.3g
- 鶏もも肉(皮付き)・・・17.3g
- 銀鮭(焼き)・・・25.2g
- 鶏卵全卵(生)・・・12.2g
- 木綿豆腐・・・7g
- 絹ごし豆腐・・・5.3g
- 牛乳・・・3.3g
例えば、鮭1切れ80gであれば、たんぱく質量は20.2gとなります。卵Mサイズは1個50gほどなので、1個あたりのたんぱく質量は約6gとなります。
1つの食品でたんぱく質を補うのは難しいため、さまざまな食品をうまく組み合わせて摂取するようにしましょう。また食品のパッケージにはエネルギー量のほかに、たんぱく質や脂質、炭水化物などの量を記載してあります。食べる際には確認し、1日に必要な量を摂るように心がけましょう。
たんぱく質を上手に摂取するには
たんぱく質を上手に食事に取り入れるにはどうしたらよいでしょうか。食事のポイントは3つあります。
食事量を減らさないこと
過激なダイエットや減量で食事を減らすと、当然たんぱく質摂取量も少なくなります。また一度にたくさん食べてもたんぱく質は体内で効率よく利用されません。まずは毎日3食きちんと食べるように心がけましょう。
できるだけ「良質なたんぱく質」を摂るようにする
良質なタンパク質とは、必須アミノ酸がバランスよく含まれているものをいいます。体内に効率よく取り込むことができるからです。下記、アミノ酸スコアを参考にしてみてください。
食品のアミノ酸スコア
- 鶏卵100、牛乳100
- 牛肉100、鶏肉100、豚肉100
- アジ100、イワシ100、サケ100、マグロ100
- 精白米61、パン44、じゃがいも73、とうもろこし31
必須アミノ酸がバランスよく含まれているものはアミノ酸スコアが100となります。この数値からもわかるようにほとんどの魚類や肉類、卵、牛乳はアミノ酸スコアが100です。
精白米はアミノ酸スコアが61ですが、これは9種類のうち一番少ないアミノ酸(第一制限アミノ酸という)のリジンの数値が61だからです。アミノ酸スコアの低い精白米でも、リジンを多く含む納豆や鮭などと組み合わせることでバランスがよくなりアミノ酸スコアを高めることができます。食品をうまく組み合わせて取り入れるとよいでしょう。
動物性たんぱく質と植物性たんぱく質をバランスよく
動物性の食品は必須アミノ酸を多く含み、アミノ酸スコアが高いですが、脂質量が多い傾向にあります。摂り過ぎると太りやすいため注意が必要です。一方、植物性はカロリーが低く、食べ過ぎてもあまり支障はありません。
食事には、動物性と植物性の食品をバランスよく取り入れましょう。たんぱく質だけでなく、ほかの栄養素も意識した食事内容が望ましいでしょう。
まとめ:「食事バランスガイド」も活用しよう
厚生労働省と農林水産省が決定したものに「食事バランスガイド」があります。食事バランスガイドは1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかの目安を分かりやすくイラストにしたものです。
そこには、たんぱく質以外の食品も載っています。たんぱく質は確かに、体をつくる大事な栄養素であり、体の調子を整えたり、免疫機能の向上にも必要な栄養素です。毎日、良質なたんぱく質を必要な量だけ摂ることが必要です。
しかし、せっかくたんぱく質をたくさん摂っても、それだけでは健康は維持できません。たんぱく質以外の栄養素も、バランスよく摂ることが大切です。毎日の食事をバランスの良いものにするために、「食事バランスガイド」も参考にしてみましょう。
【エピローグ】 もし、このようにお考えなら
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